ストレスがなくなれば白髪は黒髪に戻る? 最新研究と現場の声から見えてきた真実
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ストレスで白髪が増えることは知っているけど…
こんにちは、エブリカラーデイズ毛髪診断士 鈴木です。
『最近、なんだか急に白髪が増えてきた気がする…』
そう思っていませんか?
この言葉、実際にカウンセリングで耳にすることがとても多いです。毛髪診断士として多くの方の髪と向き合ってきましたが、急に白髪が増えたという方の多くに共通しているのが、“ストレス”というキーワードです。
白髪=加齢と思われがちですが、実はそれだけではありません。近年の研究では、精神的・身体的なストレスが毛髪の色素に影響することが科学的にも明らかになってきました。そこで今回は、ストレスによって白髪が増える仕組みや、その対策について、最新のエビデンスと現場での実感を交えながら詳しく解説します。最近疲れ気味で、白髪がちらほら増えてきたと感じていたら、ぜひ最後までお付き合いください。
ストレスで白髪は増えるの?
結論から言えば、「白髪はストレスで増えます」
2020年、ハーバード大学の研究チーム(Cell誌)は、「強いストレスによって白髪が一気に増える」という現象に、明確な生物学的根拠があることを突き止めました。ポイントは、ストレスによって交感神経が暴走することです。
交感神経が活性化すると、体内では「ノルアドレナリン」という神経伝達物質が分泌されます。このノルアドレナリンが毛包(髪の根元)にある「メラノサイト幹細胞」に作用すると、幹細胞が通常のサイクルよりも速く、そして不完全なかたちで分裂・分化してしまうのです。
本来、メラノサイト幹細胞は毛周期に合わせて必要なタイミングでゆっくりと分裂し、「メラノサイト」という色素細胞に変化してメラニン(黒い色素)を作ります。しかし、ストレスでノルアドレナリンが過剰に出ると、このサイクルが乱れてしまいます。まだ準備が整っていない幹細胞が無理やり働かされ、結果として本来の働きを果たさないまま“使い捨て”のように消耗していくのです。
幹細胞の在庫が尽きてしまえば、それ以上メラニンをつくる色素細胞が供給されなくなり、髪は色を失って白髪になる——これが「ストレス白髪」のメカニズムです。
このメカニズムはマウスだけでなく、ヒトの髪の毛でも確認されていて、白髪の発生におけるストレスの影響を強く裏付ける結果となります。
なんでストレスで白髪が増えるの?
マニアックですが、ストレスと白髪の関係をさらに深掘りして説明しますね!ストレスが白髪を引き起こす根本には、「神経・ホルモン・酸化ストレス」という三つの大きなメカニズムがあります。それぞれについて解説!
① 神経の暴走:交感神経優位とノルアドレナリンの過剰
私たちはストレスを感じると、自律神経が交感神経優位の状態になります。これは「戦うか逃げるか」のスイッチが入るようなもので、体は一気に緊張モードに入ります。このとき体内ではノルアドレナリンという神経伝達物質が大量に分泌されます。
このノルアドレナリンが毛包(髪の毛の根本部分)周辺にあるメラノサイト幹細胞に強く作用すると、これらの細胞が本来のペースを超えて急激に増殖を始めてしまいます。本来であれば、メラノサイト幹細胞は毛周期に応じて少しずつ分裂・分化し、メラノサイト(メラニンを作る細胞)へと変化していきます。しかしストレスによって無理に分裂させられた場合、幹細胞は過剰に消費され、結果的に「幹細胞が枯渇」してしまうのです。幹細胞が枯渇すると、それ以降の毛髪にはメラノサイトが供給されなくなり、色素のない白髪が生えてくるというわけです。
② ホルモンバランスの乱れ:コルチゾールの影響
ストレスを感じたとき、体はその刺激に対応するために副腎皮質から「コルチゾール」というホルモンを分泌します。コルチゾールは本来、炎症を抑えたり、エネルギー代謝を助けたりと、身体を守る重要な役割を持つホルモンです。しかし、問題は“過剰”と“慢性”です。ストレスが長期化すると、コルチゾールの分泌が慢性的に高まります。その結果、全身のホルモンバランスが乱れ、自律神経系や免疫系にも悪影響を及ぼします。頭皮においても、コルチゾールの過剰分泌は毛包環境に変化をもたらします。とくにメラノサイト(色素細胞)や毛母細胞(毛髪をつくる細胞)は、コルチゾールの影響を強く受けるとされており、細胞分裂の抑制やアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導されやすくなります。つまり、長引くストレスがもたらすホルモンの異常が、髪の色を生み出すメラノサイトの活動を抑え、白髪の発生に繋がるというわけです。
③ 酸化ストレスの蓄積:細胞レベルでの損傷
ストレスが続くと、体内では「活性酸素」が過剰に発生します。活性酸素は本来、体内の免疫機能として細菌などを攻撃する役割がありますが、量が多すぎると“酸化ストレス”として健康な細胞を攻撃してしまいます。
メラノサイト(色素細胞)やその働きを支える細胞構造は、特に酸化ダメージに弱いとされています。
具体的には:
- 細胞膜を構成する脂質が酸化されて細胞のバリア機能が低下する
- ミトコンドリア(細胞のエネルギー生産工場)がダメージを受けてエネルギー供給が滞る
- メラニン合成を担う酵素「チロシナーゼ」が酸化によって機能低下を起こす
チロシナーゼは、チロシンというアミノ酸からメラニン色素を作り出すための鍵となる酵素です。これが酸化ストレスにより働かなくなると、メラニンそのものが生成されず、結果的に毛髪の色が失われてしまいます。
さらに、酸化ストレスはメラノサイトのDNAを損傷させ、細胞の寿命を縮めたり異常な働きを引き起こしたりすることもあります。こうした細胞レベルでのダメージが蓄積していくことで、黒髪を維持することができず、白髪が生えてくるのです。
こららのようにストレスが与える複合的なダメージにより、毛髪の黒さを維持する仕組みが崩れていくのです。
ストレス白髪は黒髪に戻る?
「一度白髪になったら戻らない」と思っていませんか? 実は、最新の研究ではそうとも限らないことが明らかになっています。
2021年、コロンビア大学の研究チームが発表した研究では、人間の髪1本1本の髪の色の濃さを細かく分析したそうで、その結果、強いストレスを受けたタイミングで髪が白くなり、その後ストレスが軽減されると、同じ髪の毛が再び黒く戻るという現象を確認しました。
つまり、この発見で分かったことは、“髪の色は必ずしも黒→白の一方通行ではない”という新たな可能性です。
鍵は“メラノサイト幹細胞が残っているかどうか”
髪が黒く保たれるには、メラノサイト幹細胞(色素細胞の元となる細胞)が毛包内に存在し、それが正常にメラノサイトへと分化している必要があります。
ストレスによって一時的にメラニン生成がストップし、白髪になったとしても、幹細胞が枯渇していなければ再び色素細胞として働く可能性があります。実際に、急性のストレスによる白髪は幹細胞が死滅しておらず、環境を整えれば再びメラニン産生が再開されるケースもあります。
また、研究では髪の毛の根元部分だけでなく、中間や毛先の色にも変化が現れることが確認されていて、「過去のある時期のストレスによって色が抜け、その後回復して黒に戻る」という記録が、髪の中に“年輪”のように刻まれていることが分かっています。
メラニン産生回復のメカニズムは?
- ストレス軽減により交感神経が沈静化:精神的ストレスが和らぐと交感神経の過剰な興奮状態が収まり、ノルアドレナリンの分泌量も正常化します。その結果、メラノサイト幹細胞への過剰な刺激が抑えられ、幹細胞が無駄に消耗されずに済みます。この安定した環境が、色素細胞への分化と再生の再開を可能にします。
- 副腎の正常化によりコルチゾール濃度が安定:ストレスホルモンであるコルチゾールは、慢性的に高い状態が続くとメラノサイトや毛母細胞のアポトーシス(自然死)を誘導します。ストレスを軽減し、副腎機能が整うとコルチゾールの分泌も安定し、ホルモンバランスが整います。これにより、毛包環境が健全化し、メラニン合成が再びスムーズに行える土壌が整います。
- 抗酸化酵素の活性化・DNA修復:ビタミンCやE、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)、カタラーゼなどの体内抗酸化酵素が活性化することで、活性酸素による細胞損傷が軽減されます。また、損傷したDNAの修復機能が正常に働き始め、メラノサイトの回復をサポートします。これにより、再び色素合成の酵素が活発化し、メラニン生成が再開されます。
白髪を増やさないためのケア方法
ここからは白髪をこれ以上増やさないために、できることを紹介します。ここではストレスによる白髪のメカニズムに基づいた、3つのアプローチを紹介!
頭皮の血行を促進する
ストレスによって交感神経が優位になると、末梢血管が収縮し、頭皮の血流が悪化します。血液はメラノサイトや毛母細胞に酸素や栄養、成長因子を届ける役割を担っており、この循環が滞ると細胞の機能が低下し、メラニン生成も停滞してしまいます。また、低酸素状態になると、細胞は防御モードに入り分裂や代謝を抑制するため、結果的に髪の黒色化が阻害されるのです。つまりストレスを解消して頭皮の血行促進をすることがとても大切なんです!
有効な方法:
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頭皮マッサージ(指の腹で円を描くように1日5〜10分)
頭皮マッサージを動画で紹介:1日5分の頭皮マッサージ -
38〜40℃のぬるめの湯船に浸かることで副交感神経を優位にし血管を拡張
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有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギング)で全身の血流改善+自律神経調整
活性酸素を除去する(抗酸化ケア)
ストレスがもたらす活性酸素は、メラノサイトのDNA・タンパク質・脂質を損傷し、メラニン合成を阻害します。これを防ぐためには、体内外からの抗酸化ケアが不可欠です。特に「チロシナーゼ」は酸化に弱く、これが機能不全に陥ると黒髪の材料が作れなくなります。
有効な抗酸化成分:
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アスタキサンチン:脂溶性のカロテノイドで、細胞膜への浸透性が高く、ミトコンドリア保護にも有効
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ビタミンC誘導体:水溶性と脂溶性両方の性質を持ち、肌や頭皮からの吸収率が高い。チロシナーゼの活性化やコラーゲン合成にも関与
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フラーレン:持続性の高い抗酸化物質で、紫外線や大気汚染などの外的ストレスからメラノサイトを守る
これらの成分を含む化粧品を使うことで、外部からの酸化ダメージを軽減し、メラニン合成環境を整えることができます。
メラニン合成に必要な栄養を補う
メラニンはアミノ酸である「チロシン」から作られますが、この合成にはさまざまな補因子や酵素の働きが必要です。栄養が不足すれば、メラノサイトが働けたとしてもメラニンを合成できません。そこで大切なのが普段の食事から摂取する栄養!
注目の栄養素:
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チロシン(アミノ酸):メラニンの直接的な原料となるアミノ酸で、フェニルアラニンから体内で変換されます。たんぱく質が不足するとチロシンも不足しやすく、色素形成に影響します。
チロシンを多く含む食品:大豆製品(納豆、豆腐)、鶏むね肉、卵、チーズ、アボカドなど。 -
銅:メラニンを合成する酵素「チロシナーゼ」の補酵素として不可欠です。銅が不足するとチロシナーゼの活性が低下し、メラニンが作られなくなってしまいます。
銅を多く含む食品:レバー(特に豚・鶏)、カシューナッツ、エビ、干しエビ、カカオ(高カカオチョコレート)など。 -
ビタミンB群(特にB6・B12):アミノ酸代謝や神経伝達物質の合成に関わり、自律神経バランスを整える作用があります。ストレスによる神経過敏の調整や、髪の材料であるケラチン合成にも関係します。
B6を多く含む食品:バナナ、鶏むね肉、マグロ、にんにくなど。
B12を多く含む食品:アサリやシジミなどの貝類、レバー、サバ、卵黄など。
動画で解説:白髪予防におすすめの食材
これらの栄養素は、バランスの良い食事からの摂取が理想ですが、不足しがちな場合はサプリメントやスカルプケア製品を活用するのも一つの手です。特に育毛や白髪予防を目的としたサプリメントには、これらの成分が高濃度で配合されている製品もあり、直接頭皮に届けるケアとして効果が期待されます。
おすすめアイテム
ストレス白髪にアプローチできると感じたアイテムをいくつかご紹介します。読むのが面倒な人は動画でどうぞ!
ではご紹介!
ブラックウルフ スカルプエッセンス(大正製薬)
大正製薬が展開するヘアケアブランド「ブラックウルフ」は、白髪の改善を目的とした製品を提供しています。公式発表によると、以下の成分が白髪改善に寄与するとされています。
ボタンピエキス(ボタンエキス):植物由来のエキスで、頭皮の健康をサポートする保湿成分として配合されています。頭皮環境を整えることで、健康な髪の育成を助けるとされています。
ブラックリバースペプチド1:特定のペプチド成分で、頭皮の保湿をサポートし、健康な髪の育成を助けるとされています。この成分は、頭皮環境を整えることで、白髪の改善に寄与するとされています。
デミ ドゥー スカルプエッセンス(デミ コスメティクス)
アシタバ葉/茎エキス:生命力が強く、再生力に優れた植物です。このエキスは、色素幹細胞の移動を促進し、メラニン産生を高めることで、白髪の予防に寄与するとされています。
コレウスホルスコリ根エキスとウメ果実エキスの併用:これらのエキスは、メラノサイト内のMITF遺伝子の産生を促進します。MITF遺伝子は、メラニン合成酵素チロシナーゼの活性化や色素幹細胞の保護に関与しており、白髪改善に期待されています。
パルミトイルジペプチド-52:このポリペプチドは、メラニン形成遺伝子の発現を刺激し、メラノサイトの樹状突起の伸長を促進することで、髪の色素沈着を助けます。
エッセンスローションZERO(エブリカラーデイズ)
これはエブリカラーデイズの製品なので詳しくお伝えします!
エブリカラーデイズ/エッセンスローションZERO
【AMAZON】エッセンスローションZERO
アシタバ葉/茎エキス(メラノサイト幹細胞の活性と保護):アシタバに含まれる「カルコン類」には、細胞増殖促進・抗酸化・抗炎症作用があります。メラノサイト幹細胞の働きをサポートし、メラニン産生環境の維持に寄与。酸化や炎症による細胞ストレスを抑えることで、白髪化の進行を抑えると考えられます。
アセチルテトラペプチド-3+アカツメクサ花エキス(W成分による「毛包幹細胞の活性化」+「DHT抑制」作用):アセチルテトラペプチド-3は、毛包内でコラーゲンと細胞外マトリクスの合成を促進し、毛包の構造維持を助けます。アカツメクサ花エキスに含まれるイソフラボンは、DHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制し、ホルモンバランス由来の脱毛や老化を予防。組み合わせにより、毛包のエイジングと色素細胞の減少を抑制。
エルゴチオネイン(抗酸化とミトコンドリア保護によるメラノサイトの維持):活性酸素(ROS)を除去する高い抗酸化作用。ミトコンドリアのDNA損傷を防ぐ働きがあり、メラノサイトのエネルギー代謝と存続をサポート。酸化ストレスが原因となる白髪発生のメカニズムを根本からケア。
ナイアシンアミド(血流促進+皮膚代謝活性化):頭皮の毛細血管拡張により、毛包への栄養供給をサポート。メラニン産生に必要な酵素(チロシナーゼ)を活性化し、色素形成を促進。同時に炎症抑制や皮脂バランス調整にも作用。
グリシン、チャ葉エキス、センブリエキス(血流改善・育毛促進・抗炎症作用の複合効果):タンパク質合成を助け、毛髪の基礎構造をサポート。血行促進作用で毛母細胞・メラノサイトへの栄養供給を助ける。カテキンによる抗酸化作用で頭皮環境を健やかに保つ。
スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性酸素の除去に特化した酵素:白髪の要因である酸化ストレス(ROS)を直接除去。他の抗酸化成分(ビタミンCやE)と併用することで、酸化ダメージに対する防御力をさらに高める。
これらの製品は白髪の予防に役にたつ製品ですので、ぜひご検討ください。
ストレス白髪を増やさないためのまとめ
白髪は加齢だけでなく、生活環境やストレスとも深く関係しています。特に“ストレス性白髪”は、最近の研究によって「可逆的=戻る可能性がある」と証明され始めました。
そのためには、
- 頭皮の血流を良くし
- 酸化ストレスから細胞を守り
- 色素合成に必要な栄養を補給する
この3点を意識したケアが重要です。
「なんだか最近、白髪が急に増えた気がする」 もしそう感じたら、今回ご紹介したケア方法を取り入れてみてくださいね!
白髪ケア、頭皮ケアに関する情報は他にも発信しているので合わせてご覧ください。
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